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バーガヴァタ・プラーナ 悪魔バウマの解放

みなさま

新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年は酉年ですね。酉年は「とりこむ年」といわれ縁起のいい年です。運気を取り込み、“絶好鳥”な実りある年といたしましょう。というわけで、鳥といえばクリシュナの乗り物である聖鳥ガルーダが有名ですが、今回は「バーガヴァタ・プラーナ」から、主クリシュナが聖鳥ガルーダに乗り悪魔バウマを退治した物語をご紹介しましょう。

悪魔バウマが水神ヴァルナの王座から君主の象徴である傘を力ずくで奪い取り、神々の母であるアディティから耳飾りを略奪し、さらに天界のメール山にあるマンダラ山頂のマニパルヴァタを占領してしまったことを、天界の王インドラ神から知らされた主クリシュナは、妻サティヤバーマーと共にガルーダに乗り、悪魔バウマが治める都まで飛んでいかれたのでした。

その都の四方は要塞で囲まれていて、火と水、風の帯がその周囲を囲み、バウマの従者である悪魔ムラの造った罠があちこちに仕掛けられていました。主クリシュナはこん棒と円盤(スダルシャン)を使って、そのすべてをことごとく破壊し、また五つの頭をもつ悪魔ムラをもスダルシャン・チャクラを使って、その頭を断ち落とされたのでした。

悪魔ムラとガルーダ

悪魔ムラとガルーダ

ムラには七人の息子がいて総攻撃をかけてきましたが、ハリ(クリシュナ)は鋭い矢を三本ずつ射て、それらをことごとく粉砕されました。さらに背に主を乗せる聖鳥スパルナ(ガルーダ)は、眼下を駆ける象たちを翼でなぎ倒していき、くちばしや翼、爪で攻撃するや、象たちは完全に狼狽して、慌てて都まで退却していったのでした。こうして自軍が壊滅するのを見た悪魔バウマは、稲妻さえも凌ぐほどの勢いで、ガルーダめがけて槍を投げつけました。しかし聖鳥ガルーダは並の鳥ではありません。その槍は、まるで象の身体に花環が触れたほどのものでしかありませんでした。攻撃が完全な失敗に終わったのを知ると、悪魔バウマはクリシュナめがけて、手に構えた槍を投げつけんとします。その瞬間、シュリー・ハリは剃刀のように鋭い円盤を投げて、象に乗った彼の頭を切断されたのでした。

その後、あらゆる富に囲まれた悪魔バウマの宮殿に入られたクリシュナは、バウマが諸国の王たちを滅ぼして連れてきた一万六千百人もの王女たちが幽閉されているのを発見されたのです。自分たちの部屋へ入って来られた美しい英雄の姿を目にすると乙女たちは完全に心を魅了されて、主を全員が夫として求めたのでした。
「どうか、この方が私の夫となられて、創造主がそれに賛成してくれますように」
そんな王女たちの思いを知られるとクリシュナは、王女たち全員の身を清めさせて、美しく着飾らせ、最高の宝石や馬車、馬などをもたせて、駕籠に乗せ、ドワーラカーへと連れていかれたのでした。

幽閉されていた王女たちは美しい主クリシュナに惹きつけられます

幽閉されていた王女たちは美しい主クリシュナに惹きつけられます

全能の主はその後、自らの普遍性と完全性を保ちながら、王女たちと同じ数にご自身を顕わされて、各宮殿で結婚式をあげられました。自らの祝福において完全であり、想像もできぬわざを為されるクリシュナは、素晴らしい宮殿にて、全く同時に姿を現して、家長の義務を立派に果たし、まるで普通の人間のように振る舞いながら、女神ラマーの部分的顕現である彼女たちと楽しく暮らされたのでした。王女たちには何百人もの侍女がいたものの、主が宮殿に来られるや、自分で主を迎えにいき、礼拝の品や席を捧げ、主の御足を洗い、キンマの葉を捧げたり、扇で風を送ったり、白檀や花環を捧げ、主の髪型を整えたり、沐浴の準備をしたり、食事を提供したりして、主に奉仕をしていったのでした。

シュリー・クリシュナは聖典の中でおっしゃっています。

私の献身者はすべての人に憐れみ深く、そして誰にも敵意を抱かない。彼らは忍耐強く、真理を唯一の力としている。また彼らは汚れなく、すべての生き物たちを平等な眼で観て、すべての人々の利益のために働く。ハートが欲望で汚されず、自制心があって、心優しく、純粋で、エゴの意識がない。また寂静で、節度があり、心をよく制御し、私を拠り所として、絶えず私を瞑想している。

主クリシュナのお妃たちは、主クリシュアの献身者であることに間違いありません。これは、人間の営みの理想の姿を現しているのだと思いました。私たちは家族に対して、また他者に対して、どれくらい献身ができているでしょうか。この物語を絵空事だと片付けてはいけないのだと思いました。
師は、私たちの本当の自己は、純粋な意識、存在、アートマン、または神と呼ばれると教えてくださっています。そうであるなら、私たちすべてのうちに主クリシュナがおられるのです。その思いが私たちを他者への献身へと向かわさせてくれるのだと思いました。そして悪魔は無知やエゴの象徴です。ばっさばっさと悪魔を切り刻む主クリシュナの栄光を、この目で見てみたいものだと素直に思うのでした。

ダルミニー