キールタンの醍醐味 ①私にはバクティ・ヨーガは無理と思っていたら

ヨーガを学び始めたころ、私はバクティ・ヨーガ(神への信愛)が苦手でした。クリシュナ神の愛人ラーダーが狂おしいほど甘美にクリシュナ神を愛する物語を知り、男女関係なくラーダーのように神を愛するのだと言われても、正直なところ違和感しかありませんでした。神を愛する気持ちを感情に表すことなど気恥ずかしくてできない。自分の神への愛は確かに心の中にあるのだから、静かにしまっておけばよいと思っていました。しかし、神様は思いもよらない方法で、私のバクティに火をつけてくださいました。

マハーヨーギー・ミッションの活動に参加させていただく中で、多くのグルバイ(兄弟姉妹弟子)の皆さんが、それぞれ異なる人生経験や知識、仕事や家庭などの生活環境に応じて、その人の信仰が最大となる方法で神と向き合っていることを知りました。それでは私が全霊を捧げて神と向き合うためにはどうしたらよいだろうとぼんやり考えていたあるヨーガ・瞑想クラスの日、東京での「バクティ・サンガム」のチラシをいただきました。インドの神々を賛美し、神の御名を歌い奏でるキールタンのことや、そこではアコーディオンを横にして床においたような鍵盤楽器のハルモニウムが使われることなど、多少の予備知識はありました。「あの楽器弾いてみたい!」と即座に思いました。

ハルモニウムへの私の好奇心を察してくださったのか、ある時に先輩グルバイが「弾いてみますか?」と嬉しい一言をくださいました。私は子どものころからピアノを習い、趣味の音楽を続けていたので、「音楽で神を讃えられたら最高だ。それなら自分にもできる」と思い、皆さんと歌えるあてもないのに、さっそくハルモニウムを購入しました。

バクティ・サンガムで初めてハルモニウムを弾かせていただいた日。

その後間もなく新型コロナが流行し、バクティ・サンガムはオンラインクラスとなりました。毎回、聖者や神に関するスライドショーや参加者の体験談など、工夫を凝らした盛りだくさんの内容で、とても楽しく参加させていただいています。なにより、日本中のグルバイの皆さんとキールタンを歌えることがこのうえない喜びです。 

現在、新型コロナの感染も収まりつつある中で、東京では毎週土曜日のアーサナ・瞑想クラスや、月に一度の瞑想会のあとに有志でキールタンの練習をしています。キールタンを歌うときは、神を讃える歌声を邪魔しないように、楽器があまり出しゃばらないように気を付けています。でもせっかく神様に聴いていただくのだから音楽としても素敵にしたいとも思います。楽譜がないので先輩の演奏やCDの「耳コピ」をして、いろいろ工夫しながら弾いています。

そして先日、なんと静岡から参加してくださったグルバイも含めて総勢7人でキールタンを歌うことができました。最初にマントラ(真言)を唱え7人の声がひとつに重なった瞬間から、全員の気持ちが高まっていくのを感じました。クリシュナ神やシヴァ神の御名を繰り返し歌っていると、みんなの心が次第に熱くなり神に集中してくるのがとてもよく伝わってきます。立ち上がり身体を揺らす人、手拍子を打つ人、涙を流す人もあり、気が付けば、私も大きな声と喜びの笑顔で無心に神への愛を表現していました。表情が地味な方なのであまり分からないかもしれませんが…。

曲が終わっても、「終わりたくない!ずっと歌っていたい!」と皆さんの神への思いが高まり、なかなか収まらない様子でした。涙ぐみながら言葉にできない余韻を味わうグルバイの顔がとても印象的でした。苦手だと思っていたバクティ・ヨーガを自然に実践できるキールタンは最高です。

小菅貴仁


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です