ヨーガの実践 「ラーマーヤナ」

皆さん、こんにちは ダルミニーです。

今回は久しぶりに「ラーマーヤナ」の「ハヌマーン、ランカーの都城でシーターを探索する」の章をご紹介します。

森に追放されたラーマたち一行は、森の中に住む聖仙たちを悩ませるたくさんの羅刹(ルビ:らせつ)たちを殺し、聖仙たちを助けますが、ある日、ラーマとラクシュマナが留守をした隙にシーターは誘拐されてしまいます。(詳しい事情はちょっと割愛させていただいて)

ラーヴァナという羅刹王にシーターが誘拐されたことを突き止めたハヌマーンは、海をひとっ飛びして、ラーヴァナの住むランカー都城へシーターを探しに行きます。

そこでハヌマーンは日が沈み、夜になるのを待って、身体を小さい猫ほどの大きさに縮め、侵入していきます。ハヌマーンは、まずラーヴァナの宮殿の周囲に住む羅刹たちの邸宅を探索し、そしてとうとう羅刹王の宮殿にやってきました。

その宮殿は、あたかも財宝主クペーラ神の宮殿のように心を楽しませる広大なものであった。足首飾りの音や帯の鈴の音や、また小鼓の面を打つ音や、その他の楽器の音が響いていた。大宮殿には多くの高楼が連なり、宝石のような女官が群れをなし、とても美しい垣を巡らしてあった。その大宮殿にハヌマーンは忍び込んだ。

宝石がちりばめられた階段、黄金の格子窓、水晶でできたテラス、象牙、真珠、ダイヤモンド、珊瑚、銀、黄金でできた柱、豪華な宮殿の中でラーヴァナと美しい妻たちは時を忘れ、酒や歌舞、遊びに興じ、疲れて眠りこんでいる者もいます。これらすべての娘たちは、王仙の娘、再生族の娘、神々の娘、ガンダルヴァの娘たちなのですが、ラーヴァナが戦いの末、力ずくで奪ってきた王女たちなのでした。王女たちは最上の装飾と衣装に飾られ、連れてこられたことも忘れ、今やラーヴァナに愛情を注いでいるほどです。ラーヴァナは、とても高価な光り輝く黄金の飾りによって輝き、宝石をちりばめた王冠は素晴らしい光を放っていました。ハヌマーンは思います。

「ああ、なんと姿の美しいことか、ああ、なんと心の堅固なことか、ああ、勇気の素晴らしいことよ。この剛勇、この輝かしさ、ああこの羅刹王にはすべての吉祥の相が備わっている。もしこの羅刹王が法を犯しさえしなければ、真に強力な勇士であろうに」

ハヌマーンは、そこから少し離れた美しい寝台でひときわ美しい夫人が寝ているのを見つけます。それは実はラーヴァナの王女マンドーダリーなのですが、ハヌマーンは「若さと美しさを具えたこの女性こそシーターに相違ない」と推測し、大喜びします。そうなのです。ハヌマーンはシーターを見たことがなく、ラーマが告げた装飾品のことしか聞いていなかったのでした。しかしここでハヌマーンは考えます。

「ラーマから離れたら、あの優しい女性は眠ることなどできない。食べることも化粧することも、酒を飲むこともできないはずだ。彼女はラーマより他の人にかしずくことはできない。神々の世界にさえもラーマに匹敵する者はいない。この女性はシーターではない」と確信し、再び探し回ります。しかしなかなかシーターを見つけることができまず、まさかシーターは殺されたのではないかと不安になったりもします。でもハヌマーンは決して諦めず、ラーマやラクシュマナ、神々に成功を祈り、瞑想ののち、やっとのことでアショーカの森でシーターを見つけ出すのです。

シーターは、衣装も泥にまみれ、飢えにやつれて、哀れな様子で何度も溜息をついています。愛するラーマと離ればなれになり苦悩に涙しています。そこへ深く彼女へ恋情を抱いたラーヴァナが装飾品で身を飾り、優美な装いでシーターに会いに来ます。ラーヴァナは優しい態度でシーターを誘惑し、ランカーの女王となるように懇願します。

「私に望みのものを言うがよい。今日はそなたの最上の装飾をせよ。思いのままに、あらゆる娯楽を楽しむがよい。飲むがよい。そして愉快に過すがよい。そなたは私の寵愛を頼りにして楽しく遊び、そなたの友人も遊び戯れるがよい。わたしの繁栄と幸福を見よ。幸運な女よ。そなたは樹皮を着たラーマごときをどうしようというのだ。ラーマは勝利への道を捨てた。そのため栄光を失い、森に生活し、誓戒に専念し、いつも大地に横になる。ラーマは決してわたしの手からそなたを取り戻すことはできない。そなたはわたしと一緒に望みのまま楽しむがよい。そなたに財宝の蔵と全地球を与えよう」

シーターは悲しみに打ちのめされ、苦悩に苦しみ震えながら、ゆっくりと答えます。

「権力によっても、財宝によっても、わたくしを誘惑することはできません。太陽の光は太陽だけのものであるように、わたくしはラーマ様だけのものなのです。他の誰の者でもありません。わたくしは世界の主であるあの方の美しい腕を枕にしたのに、どうして他の者の腕を枕とすることができましょうか。わたくしはまさしくあの大地の王ラーマ様の妻たるにふさわしい女なのです。あなたがダシャラタ王の王子によって命を奪われることは確かです。あたかも巨木が雷によって破壊されるように」

何を言っても誘惑に負けず、頑として譲らないシーターに対して、ラーヴァナは二ヶ月の猶予を与え、それでも言うことを聞かなければ、切り刻んで食べてしまうぞと、ぞっとするような言葉を残して去って行くのでした。

もうお気づきのように、ここでは多くの役者たちが登場します。

欲望や快楽の誘惑に負け、美しい装飾品で身を飾り、ご馳走を食べ、遊びに興じている王女たち。

主人の命を忠実に守り、目的を果たすまで決して諦めず努力するハヌマーン。

身も心もラーマに捧げ、ただラーマだけを恋い慕い、どんな誘惑にも決して負けないシーター。

そして残忍で無慈悲、エゴと無知に支配され、自分を三界の王であると見誤っているラーヴァナ。

「人生は舞台」ともいわれ、この世の中では、さまざまな役割の人がいて、さまざまな物語が展開していっています。私たちも子供の役、学生の役、父の役や母の役、いろいろな役柄をこなしていっていても、年を重ねていっても、常に変わらない自分という本体を意識し、知っていると思います。

私はこの世界で、常により良く、誠実で、勇気のある役を演じたいと思っています。

さてあなたはこの世界でどんな役を演じたいですか?
Sita_at_ashokavana

 ダルミニー


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