スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ
(1863-1902)
「どうか! 私をこの無限の歓喜の中に留めてください!」
師ラーマクリシュナから熱望していたサマーディを与えられ、彼は懇願した。それに対して師はこう言った、「恥を知りなさい! おまえは大きなバニヤンの樹となって、無数の人々がおまえの陰の中で休息するようになると思っていた。それなのに今は自分自身の解脱を求めている」。この言葉に涙したヴィヴェーカーナンダは、その生涯を没我的な献身奉仕へとゆだねていくことになる。
師の入滅後、僧となって6年間インド全土をめぐるなかで彼が目にしたものは、貧困にあえぐ人々の姿だった。その苦しみを胸張り裂けんばかりに感じ取った彼は、人々を苦悩から救うため、そしてインドの叡知を世界に伝えるために、1893年シカゴで行われる宗教会議に出席する。そこで彼が提唱した普遍宗教の理想は西洋の人々の心をとらえ、師ラーマクリシュナによって点火された「人への奉仕を通じて、神である真の自己を礼拝する」という理想を、彼は獅子吼のごとくに説き明した。
世界中に霊的鼓舞を与えたその言葉は、苦悶に沈むインドを奮い立たせた。熱狂的な歓迎とともに祖国に迎えられ、彼は力強く同胞たちに呼びかける、
「立ち上がれ! 目覚めよ! そして目標に至るまで止まるな! 弱さというこの催眠状態から目覚めよ。真に弱き者は一人もいない。魂は無限で全知全能である。立ち上がって己を主張せよ。あなたの内なる神を宣言せよ」
兄弟弟子たちを組織し、ラーマクリシュナ・ミッションを設立した彼は、実際的に人々を助け、そして真実の実現と他者への奉仕のために命を差し出すことすら惜しまぬ人材の育成に心魂を傾けた。その39年の短かすぎる生涯に表された理想の実践は、かのブッダの再来のごとく私たちの心に刻まれている。
(絵:ダヤーマティー)